あなたのノイズ、わたしのミュージック。

自分が何にどう関心を示したかの記録。

2020/6/24のFiction / Maison book girl

批評ではなく、その時々でその作品に寄せた関心事ばかりを記してゆく文章。


その発足から6年が経とうとしているグループ、Maison book girlのベストアルバム作品"Fiction"がリリースされました。

※以下は、サブスク等の配信にて(既に/これから)聴かれている方々を主な対象としてしたためました、なんとなく、
いや、できることなら今夜に、間に合って欲しいがために。


www.maisonbookgirl.com


"Fiction"で初めてMaison book girlに出会った方へ

おめでとうございます。

リマスタリングのみならず、いくつかの楽曲ではヴォーカル・バックトラック共に新録が施されているため、
一聴してベタにリリース順で並べられているとは信じがたいほど。
フラットな心持ちで、各々の楽曲と、
そしてそこに在る歌声との邂逅を味わえたのではないでしょうか。

もしお気に入りの楽曲があったのなら、
まっすぐにそれが収録されている作品へと泳いでゆきましょう。
泳ぎ着いた先の過去(あなたにとっては新たなるとき)、
あなたは任意の深さにあるその姿を、
呼吸の続く限り見つめ続けるのかもしれません。
またはターンを決め、今作へと戻って息を継いではまた、
別の深度へとトライするのかもしれません。

こういった冒険に決まった航路は無いのがお約束ではありますが、
ただできれば今晩くらいは、20時には、現在へと帰ってきてください。
無観客ですが、ライヴの生配信があります。
せっかく現在のMaison book girlと出会えたのですから、ぜひ。


ある地点のMaison book girlを知り、そのままでいた方へ

おめでとうございます。

知っていたはずの姿ががらりと変貌しており、恐ろしかったはずです。
知っていたはずの歌も……知っていたはずの曲も……知っているままであるはずのそれらも……。
すべてが変わってしまったのが現在です。

一聴して意図を汲めない変化が加えられていると感じた楽曲があったのならば。
今年1月のホールワンマン公演"Solitude HOTEL∞F"の様子が収められているBD付きの"Fiction"を購入し、観ることで、
かつてこのグループの魅力に感応していたひとときの記憶を忘れてしまわず、
保持し続けていたあなたであれば、
そのときのうるおいを、そのとき以上に取り戻せることでしょう。

(Amazon限定盤だと、アイドルっぽい側面もいくらか垣間見れるドキュメンタリー番組が収録されたBDも付いてきます……これはここだけの話……)

ただ、手っ取り早い手段を求めるのであれば。
フリーズした頭を溶かしてくれるのは、
今晩20時からの無観客ライヴ配信かもしれません。
まあ詳細が謎なので、より昏い謎へと突き落とされるおそれもありますが、
落ちた頃にはそれもまた一興と、漂うばかりの泳ぎ方だけは思い出せていることでしょう。


いつからかMaison book girlから目が離せなくなってしまっていた方へ

おめでとうございます。
(めっちゃ我が事のように喜びます、ようにというか……)

離してなどいなかった、と信じ込んでいた己の眼差しが、
いつの間にか時の渦のなかでコントロールを失っていく。
こんなこと、今年1月に体験したばかりであったはずなのに……。
などと、落胆する間すらも無かったでしょう。

……というか、"Solitude HOTEL∞F"の渦を抜けた先、
ブラックホールに吸い込まれたモノがホワイトホールから放出されるみたいなイメージで申しておりますが、
放り出されたその先にて浮かれていた我々に、
落胆などという感情が、果たしてあったのだろうか。
ホワイトホールの存在がフィクション的であるうちにめちゃくちゃを言ってしまおう、
そのような感情は渦に吸い込まれる過程できっと削ぎ落とされてしまった!
"Solitude HOTEL∞F"の直後感じた畏怖すらも、
"Fiction"の渦を通った現在ではこの身からなくなってしまった、
この現在がそのことも証明しては……くれないだろうか……。

真剣にふざけをし過ぎました。

時の渦、などと漠然とした表現を取ってしまいましたが。
初っ端から立て続けに新録を3曲
→ 当時の録音がリマスタリングされた"cloudy irony"
→ シングル作品"river(cloudy irony)"の収録曲によるマッシュアップ曲"river"
→ "cloudy irony"同様にリマスタリングがなされた3曲
この前半部、時間軸はまっすぐに進んでいるはずなのに、
トラックや歌声、さらには1曲の構成までもが軸を無視して往来してゆく、
その動きが引き起こした流れは、まさしく渦のようでありました。

渦を抜けたその後は、既知の変化を追随する時間。
見覚えのある姿のMaison book girlとともに浮上し、
夜の明けた、あたたかな水面に齎される新曲"Fiction"。

そして、畏怖を、畏怖とはまるで度合いの違った概念によって書き換えてきた、"non Fiction"。

今晩20時。
予告された方舟に乗り合わせ、
運命をおそるおそる待ち構えましょう。


これまでずっとMaison book girlと共にあった方へ

おめでとうございます。

今晩20時に、どうかきっと……。


Solitude BOX Online



筆者は1年半ほど前にライヴを初めて観たばかり。
音楽作品そのものとはそれより前から……それでもせいぜい2年かそこらの付き合いだったと思います。
ただ、その2年かそこらの間は、Maison book girlの変わりゆく様に、
(それはたくさんの過去作品群から押し寄せるうねり。
また、それはニューリリースもしくは眼前のステージからはじける怒濤。)
さらわれてばかりの、とても楽しい漂流の旅をできていました。


おめでとう、メゾンブックガール。