あなたのノイズ、わたしのミュージック。

自分が何にどう関心を示したかの記録。

2020年5月のわたしのミュージック(Bandcamp編)。

自分が何にどう関心を示したかの記録。


突然ですが、今年5月にBandcampで私が購入した音楽の一部を紹介していきます。なるべく簡潔に……。

以下に、この記事を立てるに至った経緯をなんとなく示します。


音楽配信プラットフォームのBandcampが明日6/5に、現在COVID-19による損害を受けているであろう音楽配信者達(アーティストなりレーベルなり)へ、売上金の全額を還元するキャンペーンを行います。
こちらは3/20、5/1に行われたものと同様の取り組みです。また、7/3にも実施が予定されているとのことです。
公式の声明
daily.bandcamp.com
日本語で読める記事のひとつ
jp.techcrunch.com

こちらとは別に、6/19の売上金の全額をNAACP Legal Defense Fund(全米黒人地位向上協会内の法律事務所)の活動への寄付へと充てる、といった取り組みについても予告がなされました。
ちなみに、こちらの取り組みにつきましては、6/19のキャンペーンのみならず年間を通した寄付策も講じられているとのことです。
公式の声明
daily.bandcamp.com
日本語で読める記事のひとつ
fnmnl.tv

※いずれのキャンペーンについても言えることですが、
開催予定時刻にはPDT(米国太平洋標準時の夏時間)が適用されていることにご留意ください。
雑な認識ですが、日本から参加したい場合には同日の16時過ぎから動き始めれば大丈夫なはずです。


COVID-19にしても人種観の問題にしても、各々のうちには各々の思いがある(それには"考えたくない"も含まれる)ことかと思われます。
私にも、私自身が認識しているよりもきっと曖昧に形成された意識が私のうちにもあることを、私はまず認めます。


私は、私が私の混乱のなかで起こす、ひとまずの行動として、
先月Bandcampにて購入した音楽のいくつかを、ただただ無邪気に挙げ連ねてみることにしました。
誰かがいま求める何かへと届くものがもしあったなら、紹介して良かったと感じるのでしょうし、
そうでなかったのならば、そうでなかったというだけのことだと思う、いやそのようなことを思う間すら発生しないことでしょう。
(ことの本質を見つめていくプロセスに、このBandcampの取り組みがマッチしない方がいらっしゃるであろうことも、当然のこととしてわかっているつもりです)


なんにせよ、私が私の好きな音楽を紹介するだけのこのひとときに、しばしお付き合いいただけるのであれば、
それは少なくとも私にとって幸いなことに違いありません。



without / i-fls

ローファイな質感のエレクトロニカを得意とする東京(たぶん)の宅録ミュージシャン、i-flsさんの新譜。
全8曲からなる作品ですが、DL音源にはボーナストラックが1曲収録されております。

今作はなかなかダンサブルな楽曲が多いように感じられました。
変わったのは音色なのか処理なのか?リズムトラックに小気味良いキレがあります。
(先述のボーナストラックがチルアウトさせてくれる性質を持った楽曲であるため、
通しで聴くならばこちらを含めて聴くことを、つまりDLされることをお勧めいたします。一応nypだし)
しかし踊らずとも聴けるメロディライン、距離感を思わせる夢見がちなムードは健在。

お気に入りは"Moonlight"、"lotus"、"blue"。
特に"blue"中盤の歪みは反則めいている。
最後の最後でこんな、感情的に振り切れるなんて!


[bootleg​]​colormal - 191117 (​@​Kyoto Club Metro) / colormal

90年代後半から現在に至るまでの国内バンドに憧れた経験をもつ日本の若者達もしくは元若者達をひと串に射抜けるギターポップを放つ、大阪発ひとり宅録ユニットcolormal。
今作(レーベル公式ながらブートレグ扱いなので、"作品"として扱って良いのかは微妙なラインですが)は、現行のサポートメンバーによる4人編成でのライヴ音源が収められております。

この音源が収録されたライヴには足を運べなかったため、その前後に観たライヴとの比較めいた聴き方をしてしまうのですが……。
このメンバーで固まった当初から存在していたダイナミズムがより堅牢になったことが伺える楽曲("塔"、"東京"のイントロ部、"大きな怪獣")や、
プレイヤーとして個性的な4人を堪能できる楽曲("病熱"、"さまよう": イエナガさんはギタリストとしても魅力的だ……)は、
視覚情報をもたない、録られたままのライヴ音源でも輝いて聴こえます。
しかし、同期が構成に含まれる楽曲に関しては、その後私が観た2本のライヴでのプレイが断然良かった。
ライヴバンドとしての過渡期を示す資料として貴重なものとなるかもしれません。
(このままバンド形態をとって続けてゆくのか否かも、私が知り得ることではありませんが)


The Blessing From Wiring / Shuta Hiraki

アンビエント方面で精力的に活動する(事実としては何の矛盾もないはずなのに、相反しそうな何かを感じさせる一文になってしまった)長崎のミュージシャン、Shuta Hirakiさんによる2曲入りの作品。
3月に聴いたVoicing In Oblivionの、適切な距離感で保れたノスタルジーに心を打たれ、その期待感のまま試聴はせずに今作を購入。

その前作Voicing In Oblivionで呈されていたのは、環境音と旧いレコードの音源が紡ぎ上げられた繊細な表現であったのに対し、
今作で提示されたのは重みのある、硬質な手触りの音色が重なってゆくふたつのドローン。
しかし慎重なレイヤーの重なりには、同一人物による手を感じずにはいられない。
何なら今作に収録された2曲ですら、まるで違った性質の重み・手触りをしたものたちであるにもかかわらず、
バンドルされたことに違和感がない。

響きの変化は割と頻繁に訪れる(ある地点では一瞬たりとも同じ姿を取らないまでになる)ものの、
どちらかといえば目を閉じ、休息をするのに程良い安寧を齎してくれる音楽ではあります。
個人的な趣味でしかありませんが、"Boundary changes due to clouds outflow"の10分過ぎ、
フィードバックノイズめいた線がじわりと重なってきた後さらに2分程度をかけ、
鍵盤楽器?の硬い(しかし輪郭のぼやけた処理が加えられている)音色の落とされる箇所へと移ろってゆく、
ここのおおきな安心感が、幸せなものでした。


ある会員 / 波多野裕文

このブログ(にとどまらず私のTwitterやら日常会話においても)おなじみ?
日本のロックバンドPeople In The Box波多野裕文さんによる、宅録ソロプロジェクト。
現在制作中の2作めのソロ作品より、今回はこの1曲のみが公開されました。

硬質で狭い響きのビートに柔らかく処理された生楽器(鍵盤とガットギター?)、2層のヴォーカル、
あとは装飾的な音ネタのいくつかが重なるだけ(しかしこれこそが展開の妙を繋ぎ止める鎹であるかのようにも感じられる)、
一見シンプルに構築された、風通しの良いトラックメイキング。
その上で歌われる詞世界、これを語る視線はにこやかなようで皮肉を湛え、ひとたび捉えたら曲の終わりまで逃さない。

"物語"を構築するパーツのうち、屈強な梁や柱の働きを与えられるのは、ほかでもない言葉である。
その"物語"が音楽の上に置かれたとしても、それともほかの基盤(たとえばある時代のある国に醸成された状況)の上に置かれたとしても、その構成要素のパワーバランスは概ね変わらない。

その"物語"に、言葉に絡めとられず、各々は各々の生ける手段を探せるだろうか?
音楽には終わりがある、しかし終わりのない(もしくは人間の体感する時間のうちには終わらないように感じられる)基盤もまた存在するため、
その手段を探す思考のトレーニングを重ねるのは、きっと無駄な動きではない。

……少々逸脱しました。

ときどき挟まる弦楽器(ギターなのか別の民族楽器なのか、絶妙に聴き取れない……見通しが良いなどとよく言えたものだな)のアラビアンなフレーズがチャーミング。


コンピレーション作品

あと2作、特定のコミュニティやライヴをする場所のために作られたコンピレーションアルバムを紹介いたします。

これらは企画立ち上げに至るまでの信念が明確に打ち出された作品であり、
そちらを当記事で説明してしまうと当記事の"音楽をただただ無邪気に……"というムードから逸脱してしまう恐れがあるため、
詳しいところは各コンピレーションの特設サイトをご覧になっていただいた方が良いのかもしれません。

ただ、ならばそもそも触れなければ良い、と判断してしまうにも惜しい作品でして……。
様々な音楽家達が一旦ある個人へ回帰して、この時代を生きた記憶、希求をする仕草を吹き込んでできた音楽達の集積。
不謹慎極まりない発言ですが、ライヴ会場ではなく家にいながらこの時代観の共有・問いかけを呼び出される体験は、
非常に刺激的なものでした。

(もはや主観ベースでしかものを考えられなくなってきてしまっているフシがありますが……、) なるべく近い時代に在るうちに、聴かれて欲しいと感じた作品達です。

CONTACT (TOKYO=COMMUNE)

特設サイト
tokyo-commune.com

Play For SCOOL (三鷹SCOOL)

特設サイト
scool.jp

(こちらに関してはCDRでの販売もあったため、私はそちらを選択しました。
こんな記事を書いておいて何なのですが、私はやはり形のあるモノが好きだ……)



結局私が望むことは何なのか、答えは出ないままですが、
明日6/5にも、好みの音楽と巡り合えたならきっと純粋に嬉しいはず、
わかりきったそれはただの経験則でしかないのですが、
それでも何か、良い出会いがあればなあと願います。