あなたのノイズ、わたしのミュージック。

自分が何にどう関心を示したかの記録。

2018年のわたしのミュージック。

各種SNSやブログにて、1年間の音楽との関わりがまとまった記事がアップロードされること、もはや風物詩になっていた流れですが、

サブスク配信のサービスが増えた影響か、この年末はこれまでよりもたくさんの方がその流れに乗っかっているように見られます。気のせい?

敷居が下がったのならば跨がない理由もないかもしれない、と思い、

またこの年末年始とても平穏な暇があるので、数年ぶりにちゃんとまとめることとしました。


2018年にあってよかった音楽作品

音楽を誠実に音楽として聴いてその構造や楽想について思索していくことが趣味なのではなく、

ひとが作ったものに対して自分が何を思ったのか、どこをどうして好きになったのか見つめ直していくことが、自分のことばかり考えているのがひたすらに好きなだけなのだとようやく気付いたのが今年でした。

ゆえに年間ベストという呼称への違和を重めに感じたので、章題のようなテーマで編んだのが以下のリストとなります。

上記のような観点から聴けてよかったなと思う音楽作品は、たくさんあったように感じます。

各リストは五十音順です。

新譜編

自分にとって特に事件性が高かったのは、以下の6作でした。

順番はリリース順……だったはずが1番目と2番目が逆ですね、まあいいか

Kodomo Rengou / People In The Box
merkmal / colormal 
分離派の夏 / 小袋成彬
動物的/人間的 / OGRE YOU ASSHOLE
yume / Maison book girl
草木萌動 / 長谷川白紙

詳解

Kodomo Rengou / People In The Box

2005年結成、2007年の全国流通音源発売から現在に至るまで揺るぎなく活動を継続しているスリーピースロックバンド、People In The Boxによる、

アルバム作品としては前作Wall, Windowから3年半ぶりのリリースとなった今作。

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比較的コンスタントに作品をリリースするバンドであったため、ここ数年は楽曲は作品の中のものとして一度作り込み、ライヴの中でさらに強度を高めていくといった扱いをされていたようですが、

今回は楽曲を楽曲としてひたすら追いかけていくことを優先した、つまり順番を逆転させて丹念に作り込んだようです。

結果として、一曲の漏れもなく強固に組み上がっており、個々の楽曲を楽しむこともできれば、

アルバム作品としても過集中が見られずひとつのものとして捉えやすいといった仕上がりになっています。

一曲一曲が密度高く仕上がってると今度は胃靠れを起こしてしまうといった経験をすること、私はままあるのですが、

このバンドの場合楽曲を作り込むその方針が、よりたくさんの人々に聴かれていくものをつくろう、とはならないようであるため、

適度に間の取られた楽曲・作品の構成や音作り(こちらはエンジニアさんの敏腕による部分も大きいとは思いますが)により、そういった面での心身的負担がさほど感じられませんでした。

夜戦の一番サビの長さとか、かみさまの音の重さとか、作者としてのエゴを突き通した結果であろう部分がいい塩梅に効く、毎度平伏するばかりのバランス感覚。

そもそも、音楽を聴き始めてからの約10年間の蓄積により私は、彼等の構築する世界を逐一盲信するようにチューンナップされてしまっているので、端的に言うと信者なのでアレなのですが

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間違いなく手触りがよくてコミュニケーションを拒むようにも見られない、

しかし、なにを為したから、どんな思想があるからこれはすごいのだと、わかったようなことをずばりと一言で語り切ることは絶対にできない、

人間のような奥床しい存在として意識に飛び込んできては忘却を許さない作品であった、と私の中では位置付けられています。

何かを得るために音楽を聴いているわけでもないのですが、

私は私としての、私以外の全ての人間も私以外としての確立に向かって生きているので、完璧な理解なんてできなくていい、

そのことを諦念の力を借りずにわかることができた、そのきっかけとなったという点においても大切です。

merkmal / colormal

2015年からコンピレーションやSoundcloud等にてバンドサウンド主体の楽曲を発表している宅録個人ユニット(だった)colormalによる、初のミニアルバム作品。

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これまでに彼が莫大な量の蓄積をしてきたであろう頭のストレージから惜しみなく美味しいものを取り出して、

その全ての素材を損なわない抜群のセンスで、丹念にまとめ上げられたいびつなポップソングの数々。

若きミュージシャンのスタートダッシュとして最高級のそれであろう、純粋な没頭の迸りを感じられること、

どうしてこんな贅沢な体験がただ聴くばかりの存在にもなれてしまうリスナーに対して許されているのだ……と、初聴時には途方に暮れていました。

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音楽をつくることができる人への羨望を感じること、これまでにも緩慢に流れた思考の果てに到達した経験は一度や二度では済まされませんが、

この作品を聴いて以降、本気でそれを思ったことはない。

それほどに、なぜこれをつくるための努力を、私はただ聴く以上に音楽に関わる努力を全くしてこなかったんだろうって、なんども聴き込んでめちゃくちゃに悔悟しました。

ひととおりを経て、ミュージシャンという立場への憧れを概ね棚卸しできたことを自覚できたので、

今後自分が音楽をつくるようになったら、それは必要性を感じた上での行動となるだろうと、前向きな展望をするようになりました。

つまりは音楽に触れることがとても楽しくなるきっかけになった作品です、深く感謝しています。

分離派の夏 / 小袋成彬

R&Bユニットへの参加や他のミュージシャンのプロデュース業といった活動を経て、2016年にSSWとしての活動を開始、

小袋成彬名義のアルバム作品としては今作が初。

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俯瞰の視点をキープできるほどの距離をもって音色が要素として配置されていることが、音楽の作り方を知らない私にもなんとなく予感できるほどに、クレバーな端正さとしてありありと顕れてはいるのですが、

それならどうして、こんなにもつくった人間の存在感がここにはあると確信的に思ってしまうの?と考えてることを止められなくなり、なんども誘われてしまった、怪作。

音楽、情動的なものであるように捉えがちだけれど(その認識が一般的なものなのか自信なくなったので『捉えられがち』と書くのをやめた、実際どうなのでしょう)、

どれだけ感情発で作り始めたのだとしても楽曲として切り出している時点でメタ視点が完全に消去されることはない、特に歌詞なんてそう、

音色として必要な歌声を引き出すために編む歌詞を、彼はその性質を分かりきっていながら、それでも戦いながら書いているのだろうと思います。

その痕跡の生々しさが、この曲にこの歌詞を当てていいのは彼のみなのだと力強く思わせてくる……のかなあ、いまだに自信持って言えない……。

動物的/人間的 / OGRE YOU ASSHOLE

2001年結成、2005年に全国流通音源を発売、フォーピース編成のロックバンドOGRE YOU ASSHOLE

演奏にゴリゴリ介入してくる音響チームを擁して凄まじい体験をもたらす圧倒的なライヴで無二の存在。

2018年における新作はいくつかの形態によってリリースされた、この動物的/人間的のみ。

※配信は一曲のみのシングルですが、この記事では12inchシングル盤を想定しています。

こちらについてはあんまり言葉に起こすことないです、

正直どこを軸として構成された楽曲なのかとかいうところですら考えたことがない、考えないでいられるため。

自分自身の初期衝動にすら頼らずして、自分自身へ何の批評を立てず純粋に何度でも聴ける、

私にとって、たぶん唯一のそのような存在が彼等です。

yume / Maison book girl

2014年結成のアイドルグループ。プロデューサーであるサクライケンタの美学に満ちた、緻密な音色と変拍子の散りばめられた楽曲が特徴的。

今作のテーマはアルバムタイトルにもあるように「夢」。

この記事書くためにようやくアイドルさん達のお姿をしかと拝見しました、矢川葵さんどストライクです……。

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今作以前から存在は認識していて、確かに美しい楽曲だしそれの要素として合った声をしているけれど、

どうしてアイドルの歌う楽曲としてこれらを展開し続けているのかいまいち見えてこなくて(見ようとしていなくて、のほうが正しいか)、足踏みしていましたが、

今作をApple Musicで聴ききって、ああこれをやり通せるポテンシャルを彼女達に感じたから、

音楽を突き詰めるための共同制作者として選択され続けたのが彼女達であったのだなと腑に落ちました。

それを分からせてきたのは、彼女達の楽曲中でのふるまいでした。

活動の全編において、軸となっているのは楽曲なのかなという認識であるのですが、

(Amazonでインスト版のCDが付属している形態で売られていたので、そちらを購入したのですが、

たぶんそのインスト版をはじめに出されていたら、これはこれで作られたものなのかなって思ってしまったでしょう、

もちろん歌がある状態が最適なバランスですが)

その環境の中で自我を持たずに歌声を発しているわけではなく、その大切な自我を楽曲に注ぎ込んでいく没入、

それを4人全員が成せている、意思共有の体制。

彼女達はこのグループの根拠として、いまとても強い。

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あんまりまだよくわかっていないけれど、自分にまたすこし新しい観点が発生したのを確かに感じてそれが嬉しい。

草木萌動 / 長谷川白紙

2015年頃?より自身のSoundcloudやネットレーベルからリリースを重ねているSSW?

今作は初のCD形態によるリリース。

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2018年収束の2週間前にこんなぶっちぎったオリジナリティで価値観ぶん殴られるなんて、ちょっと想定がなかった……。

とても情報量が高く、華やかな音色が詰め込まれているけれど、今回抜き出した6作の中ではもっとも閉じている印象があります。

作品世界への介入や分析はけして許されていないな、と初聴時に直感した作品。

初めて聴いたそのときから、すべてが適切な選択であるように感じられてしまうなんて、

興味があるのに、こんなにも自分の意識を介して見つめることが叶わないなんて、

赤子のもどかしさをいまの意識で追体験したら、こうなるのだろうか。

そのような体験を引き起こされたことに対する悔しさもあるのか、ついつい聴いてしまう……。

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この作品に関しても、曲調に関しては好きなものの系譜(展開のめまぐるしさを繋ぐやり方の選択が適切にしなやかであるところとか)であるにしても、

ここまで異世界であると感じるものを拒否にも嘲笑にも逃げず聴き続けている自分自身がわからなくて、

それは間違いなく事件ではあるな、と思ったのでラインナップしました。

長期戦を覚悟して消化をしていく心算です。次作が出る方が早そうな気もするけど


その他

詳解に回そうか迷ったのはORANGE RANGE、CRCK/LCKS、GEZAN、corner of kanto、土井玄臣七尾旅人、Boyish、OPN。

一貫性もキリもなくなり上げれば上げるほどまとめて失礼になってしまうことが目に見えたので、やめました。よほど気にかかってきたら加筆します。

あとayU tokiOの遊撃手をリストに入れたかったのですが、サブスク配信がない。

しかし配信待たずになるべく早めにアルバムを一枚通して聴いてほしい、

誰の手からもこぼれていかないポップさを残しながら、でもどこかネジ外れてるのわかるから、そしていまのその狂いがわかるのは今だけだから……!

youtu.be


旧譜編

あるんですけど、詳解を記事として発信する必要はないかと判断しました。

一応Twitterには流してます。


2018年見たライヴの履歴

1年を通して総括することにあまり意味を見出せなかったので、記録にとどめます。

OGRE YOU ASSHOLE野音が一番記憶に焼きついています、単純に奇跡をみた。

ちなみに今年、ライヴの感想は主にInstagramに載せるようにしていました。

その日心が動いたということをなるべく演者の負担がない形で還元したいからというのと、

Twitterよりは後から見直しやすいからというのがそれを続けている理由です、きっかけは忘れた。


所見

真面目なひとが、自身を批評しながらつくったものが結局好きなのでしょう、自分自身の正当性を補強したいだけなのかもしれないが……。

シーンの状況とかわからない、無意識に流されまくっているんだろうと諦めてはいますが、少なくとも自意識の上ではそうでいるので、

来年もたくさん、音楽を経由した自分が満たされているといいなって、来年への期待はそれだけです。