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自分が何にどう関心を示したかの記録。

2/17 昼ご飯のおとも 京都大学春秋講義 共生ネットワークでよみとく地球生態系の未来

土曜日は17時から0時まで寝ておきながらそのまま寝直してしまった、夜戦ちゃんの名を返納したほうが良いのかもしれない。

2/17のおとも

京都大学春秋講義 共生ネットワークでよみとく地球生態系の未来


京都大学春秋講義 共生ネットワークでよみとく地球生態系の未来

ocw.kyoto-u.ac.jp

インプットの鬼として勝手に崇めているTwitterのフォロワーさんがいるのですが、

氏(?)がよく観てらしている京大のOCWが気になっていて……。

背伸びである感は否めませんが、暇にしてしまった休日を呑み込むためのオブラートとしてはよかったかもしれない。 .

京大には生態学研究センターという施設があるようです。今回はそちらの准教授の方による講義。

動画中で示されていた言葉をひくと、

生態学とは、生物と地球環境全体との関わりを追求していく学問、

地球全体での物質や食料生産を考えていく上で欠かせない学問であるとのこと。

これまで趣味みたいな印象で捉えていてごめんなさい……となりました。

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以下講義のメモ。


土の中にいる真菌には、植物と共生関係を持つものがあることが知られている(菌根菌)。

真菌: 窒素・リンの供給、外敵からの保護

植物: 光合成によって産生された糖の供給

この共生関係がどのように広がり繋がっているのか、その構造が研究されている。

しかし、真菌を取り巻く生物間の相互作用は、研究の進捗が追いつかないほどに膨大な真菌自体の多様性(150-510万種)も相俟って、

いまだわかっていない点も多々ある。

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DNAバーコーディング: DNA配列から生物種を検索できるデータベース

菌根をすりつぶし、DNAを調べ、このデータベースと照合することで、

どの植物種とどの真菌が共生しているのかを調べることができる。

そのネットワークを図示したところ、機能のわからない菌(内生菌)が多数存在しており、

これらはたくさんの植物の生態系に関わっていることと見受けられた

→共生系の理解のヒントとなるかも?

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上記したどこの生態系にもいる内生菌の系統、ビョウタケ目のうち植物の根に存在しているものは、

キノコを作ることもないためこれまであまり注目されてこなかったグループであった。

一体何をしている真菌なのだろうか?


いろんな植物と共存している内生菌について調べるため、まずは菌根菌との関わり合いを見ていくこととした。

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まず、解析方法を定めなければならない。

それには、ヒトの共生者である腸内細菌と、宿主であるヒトとの関係性についてのデータ(次世代DNAシーケンサーのデータだそう、こういうの?)の解析方法を参考にした。

腸内細菌が宿主のヒトの健康状態にどのような影響を与えるのか、ということを調べるために、どういう菌がどういうタイプのヒトのお腹の中にいるのかといった解析が行われている。

(解析どうやってるのか気になってもとの論文たち見にいったら、

一元配置分散分析とやらをどうにかするソフトウェアや、共分散を見出す?ためにRで書かれたライブラリなんかがゴリゴリ出てきてさっぱりになってしまった、

いいかげん統計にも向き合わなければならない……)

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上記の技術を使い、ひとつの森でひとつの種類の植物から採取した根のひとつひとつから菌をとって、それらの共生関係を調べた。

すると、やはりよく共存している菌の組み合わせと、一本の植物からは出てこない菌の組み合わせというものがあるらしいと見られた。

→今回調べた種類の植物では、菌同士の共生関係(共生叢)のパターンがふたつあるようだった。

腸内細菌も同様に数パターンの分布があること、またその分布のパターンが宿主のヒトの健康状態にも繋がっていることがわかってきている。

→今回の共生叢のパターンもそういった傾向があるとすれば、ひとつひとつの真菌を見ていかなくとも、

共生叢ごとに植物との関係性を見ていけば良くなるため、研究が進めやすくなるのではないか。

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さらに、共生叢のコアとなる真菌がいる(コア共生微生物: たくさんの真菌との共存が見られる)のではないか、といった推測も先の調査によって示唆された。

このコア共生微生物は、内生菌であるパターンが多かった。内生菌が生態系の真ん中にいるといっても過言ではないかも?

このコア共生微生物がなんであるのか見定めれば、その種の植物の生育を助ける微生物叢を導入しやすくなるため、農業・生態系の回復といった応用的なテーマにも発展していけるのではないか

先住者効果: 先に入った菌が後から来る菌の侵入を阻む仕組み

コア共生微生物を植物を定着させたい土壌中に打ち込むことで、この先住者効果が引き起こされそのコアと共存できる菌ばかりが集まるようにしていければしめたものである。

また、内生菌は菌根菌よりもはるかに培養がしやすいため、もしキーとなっている内生菌があればそれを応用できる可能性は十分にある。


生物は、当面は地球上の資源を分配して生きていく必要がある。それを阻む課題には、以下のようなものがある。

  • 一定のものが作れるよう品種改良された農作物は、その構成にクリティカルな感染症に対し非常に脆弱である

  • 世界的にリン肥料が枯渇しており、しかも埋蔵量が特定地域に偏っている(世界情勢や倫理観にも繋がるような問題点ともいえる)

→土壌の生態系について基礎研究を進め、食料生産のできる成熟した土壌をもたらす条件/作り上げる手段を策定していけば、

そこから得られる知見はこれらの問題へ立ち向かうための手段を構築する考え方のひとつにもなりうる。

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しかし、土の中の微生物叢は多様な機能を持つ(土の中にいる虫を殺し、その体内の窒素を植物に与えるなんてものもいるらしい)ことが現在わかっているが、

これらの相互作用をどう見極めて、どうやって管理していけたものなのであろうか。

→先に提示された最適なコア共生微生物を見出し、それを活用することで微生物叢を制御できるのではないか?

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最適なコア共生微生物の基準として、以下の3つを設け、それぞれ数学的指標を定めた。

  • 機能的な土着微生物のリクルート(呼び込み?)

  • 病原生物の侵入阻止

  • コア共生微生物同士の相性

そして微生物の探索も並行して行い、様々な環境(冷温帯林・暖温帯林・亜熱帯林)に赴き、採取を進めた。

→環境をまたいでコアとして存在している菌があれば、それは生態系の要となるコア共生微生物なのではないだろうか、

つまり、色々な植物種に対して有用な存在なのではないだろうか。

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150種の植物から、8080系統の真菌を採取し、上記の手法と考え方でランキング付けして傾向を探った。

そしてランキングの高い菌について調査・実験を重ねていくうち、講義の冒頭に挙げられていたビョウタケ目の内生菌の有用性が目立つようになる。

例. 菌根菌を持たないアブラナ科(ダイコンなど、野菜に多く見られる科)へのリン供給

ビョウタケ目の内生菌が行なっていることが判明。

→いままでアブラナ科の生産には菌を活用できないとされていたが、これならあるいは……!

例. 高山のような極限環境に生きる植物を育てる内生菌

これの根にも非常に多くのビョウタケ目があり、強い共生関係が見られた。


農業への具体的アプローチを検討するため、農地における共生叢の研究も進めている。

例. ダイズ圃場に発生する根こぶ線虫の発生と共生微生物叢の関係性

細菌の群集には顕著な違いが見られないが、真菌の群集をみると、線虫を捕食する菌の有無という特徴的な違い(線虫が涌いている所にはこれらの菌が多く見られた)があった。

→はじめに捕食菌を土壌中に入れておく、これらの菌を呼び込めるコア共生微生物を探してそれを入れておく、線虫が出た後の土壌を放っておき捕食菌を大量に増やす、など、

線虫に強い土壌にするための可能性を多数検討できる。


内生菌の共生ネットワークについての研究は、今後も様々な方面への展開が期待できる。

→微生物叢制御技術と従来の農業技術とは組み合わせor掛け合わせでの利用ができることがわかってきたため。

これまでの内生菌の特徴(多くの生態系に関与、培養が容易)からして、幅広い植物種の幅広い課題に対しての解決策を迅速に提示できるであろうと考えられる。

  • ひとつの品種からなる畑に複数の微生物叢を組み込み、作物が病気・環境変化で斃れるリスクを分散

  • コア共生微生物叢の最適な時空間配置(1年目にこの叢を導入したら2年目は……といった具合に調整)を見出して設計、病害のリスクの低減や窒素・リンの利用効率の向上を図る

組み合わせの検討や実際の農地への導入には、他分野の技術(組み合わせ: 情報技術、導入: 流体工学 など)を活用していく必要もある。これらの活用によっても、技術のさらなる発展を見込める。

生物多様性の特色を活かし、最小の人為的コントロールで、土着の微生物による農業の問題解決を、ひいては地球全体の食料・環境などの問題解決をも目指していく。


地道な採取と緻密な解析、あとむちゃくちゃに俯瞰的な視点が掛け合わさった研究ですね……それらがスリリングに繋がっていく様が、話を聞いてるだけのこちらとしては気持ち良い。

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講義中にも挙げられていた生物多様性の原理が、私は非常に好きです。

生物多様性: ある系(例. 生態系、地球全体 など)に住まう生物種が多様であること

生物種が多様であったからこそ、地球上に発生してから今に至るまで生命は絶えることはなかった(とされている)のだから、

私のようなしょうもない人間もとりあえずいてもいいのであると、大事な弁として作用している考え方のひとつです。

適当に投げ打つべきでない問題まで適当に投げ打つ時とかにも使ってしまいがちでそれは良くないのですが。


2/17の昼ご飯

チーズキーマカレー。食べてから消化器の様子が少しおかしい。

ちなみに晩ご飯はおもちふたつ。